8.01.2014

【独占インタビュー】飯村豊 外務省日本代表によるガザに対する日本の役割(2)


堀尾 藍(INDIGO MAGAZINE 編集長)
AI HORIO, Editor in Chief


7月24日、外務省の飯村豊日本代表(中東地域及び欧州地域関連)に対する独占インタビューを行わせて頂きました(於外務省政府代表室)。以下、インタビューの様子です。



Q:パレスチナ自治政府はイスラエル政府による攻撃に対し、どのような対応をしているのでしょうか?
A: 既に申し上げたように、(自治)政府はハマス側に働きかけたり、ハマスと関係の良いカタールや、国連事務総長、ケリー国務長官、アラブ連盟、日本を含む国際社会の多くの国々と接触し、速やかな停戦の実現に向けて全力を注いでいると思います。

Q:また、日本政府はどのような対応をされていますか?
A:停戦実現に向けて安倍総理のネタニヤフ イスラエル首相への働きかけの他、様々の努力をしていますが、従来から日本はガザ地区への支援を行っています。ここに、現在実施中の支援プロジェクトの資料がありますが、日本はかなりガザ地区に対し、支援を実施しています。資料を見てお分かりのとおり、日本政府は国際機関やNGO経由でガザ支援を行っています。
NGOについては、「パレスチナ子どものキャンペーン」などガザで活動している日本のNGOに政府は財政支援を行っています。NGOだけでは、財政的に不足するため、政府が支援しているものです。
また、これに加え現在の緊急事態に対応するため、新たな支援を検討中です。

Q(補足1):なぜこの2つのNGOに特化しているのですか?
A:この2つのプロジェクトに特化している訳ではありません。良いプロジェクトを実施しているNGOはできる限り支援をしたいと思っています。例えば、シリア難民に対す支援ですと、Peace winds Japan等、多くのNGOに支援しています。

Q(補足2):この資料の国際機関経由の支援の一覧によると、UNRWAへの支援額が他の機関よりもかなり大きくなっています。それは医療支援が要因でしょうか?
A:いえ。一般的な難民に対する支援は、以前、緒方貞子氏が高等弁務官を勤められた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が行っていますが、パレスチナの難民支援はUNRWAThe United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugeesが行っています。医療や学校といった教育の支援も行い、行政の役割を担っています。そのため、UNRWAは一番支援ニーズが多いですし、UNRWAへの支援がなくなれば、子ども達の学校支援もなくなってしまいます。日本政府の国際機関を通ずるガザ支援は、UNRWA UNICEF UNDP等があります。また、食糧ですと、WFPに対する支援があります。
 以前、ガザでも、JICAの人達が入っていましたが、今は退避勧告が出ています。NGOの場合も、今、日本人スタッフは出国しており、現地職員のみです。西岸の方は様々なプロジェクトがあります。それは、国際機関経由もありますし、NGO経由もありますが、日本政府が直接実施しているプロジェクトもあります。


         写真 飯村豊日本代表(筆者撮影)


Q(補足3):日本政府ということはJICAですか?
A:そうです。JICAのオフィスがラマラ(Rām Allāh)、ジェリコ(Jericho)にもあります。
パレスチナの国家が樹立されるのが夢ですが、そのためには、持続的な経済活動が必要ですし、国家の様々な制度、例えば教育制度も必要です。今、一つ力を入れているのはプライベートセクターの活性化です。ジェリコ郊外で、農業加工団地(Jericho Agro- Industrial Park:JAIP)の建設を進めています。現在、第1フェーズを実施中で、最初の工場が来月から稼働する予定です。
 最終的に第3フェーズまで終わると、約7千人の労働者が雇用され、労働者の方々の家族も入れると約2万人の人々の生活を支えることになります。西岸の人口は280万人ですので(パレスチナ全体では約450万人の人口)、大規模なプロジェクトになります。
 最初に稼働するのは、オリーブのエキスで化粧品を作るためのもので、そのエキスを抽出するための工場が完成しつつあります。二番目に冷凍野菜工場を作っています。将来はこの工業団地の商品を、ヨルダン渓谷のアレンビー橋を渡ってヨルダンや湾岸へ輸出する計画があります。そうすると、外貨も稼げます。僕達は、それらのプロジェクトに力を入れています。もちろん、他のプロジェクトも実施しており、病院、学校を建設し、下水道を整備したりしています。また、将来は観光が発展することが望まれますので、JICAが観光プロジェクトを実施しており、この場合は国際機関を通じてではなく、二国間援助になります。
 パレスチナが国家として自立するために、世界中の国が援助を行わなければなりません。東アジア諸国が自らの経済発展の経験を踏まえ、パレスチナを支援していくことが重要だと思います。昨年の3月1日にパレスチナ開発のための東アジア諸国会議(Cooperation among East Asian Countries for Palestinian Development :CEAPAD)を日本のイニシアチブで作りました。2013年2月、東京で第1回目の閣僚会議が、また、今年の3月に、第2回目の閣僚会議がジャカルタで開催されました。日本からは岸田副外務大臣が共同議長として出席され、今後の支援の方針について話し合われました。日本がイニシアチブを取り、東アジアが一緒になり、パレスチナ支援を行う。今までのパレスチナ支援ですと、アメリカとかヨーロッパ或いはアラブの湾岸諸国が中心でしたが、これからはアジアの人達も力を合わせる必要がある、と考えます。
                  (つづく)

<参考資料>
JICA(JAIP)
Cooperation among East Asian Countries for Palestinian Development (CEAPAD)

■飯村豊(いいむら ゆたか)
昭和21年10月16日生、東京都出身
日本政府代表(中東地域及び欧州地域関連)。フランス大使、インドネシア大使、等を歴任。

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